大江戸妖怪物語
「八ッ裂烈火!」
無我夢中に眸の体を切り刻む。煙の中、やはり生々しい感触。
目一杯切りつけたところで僕は眸から距離をとる。煙の中から浮かび上がってきた眸は・・・やはり無傷だった。
「なんで死なないんでしょーね♡」
僕たちを小馬鹿にして眸は爪を舐める。そして眸は語りだした。
「神門ぉ。あんた、私が殺した晴朗に、虐められてたのねぇ。かわいそうにぃ」
「?!な、なんでそれを・・・」
「晴朗の目玉で見たからよ。過去を。可哀想にね。私が殺してあげてよかったわね」
「ひ、人殺しは・・・よくない」
「感謝してよ。ね?感謝」
口角を目一杯持ち上げ笑う眸。悪魔はニタリと微笑んだ。
「本当は嬉しいんでしょ?まあアンタの目玉を嵌め込めば・・・感情がわかるけどさ」
「やめろ、やめろぉぉぉ!!!」
「もぉーっと殺してあげたっていいのよ?晴朗の目玉にはアンタをいじめてた晴朗の仲間たちもビジョンに映っているし。皆殺しにしてあげようか?」
顔を抑えながら笑う眸と顔を抑えながら苦渋にうかぶ僕の顔。それだけは、思い出したくもない、気味の悪い記憶なのに・・・。
「神門・・・」
雪華は僕の肩を掴んだ。
「雪華・・・慰めてくれr」
「何泣いてんだ、アホらしい」
慰められるどころか貶されました。僕らって一応仲間だよね・・・?
「お前の過去などどうでもよいわ。今、大事なのは目の前の敵を倒すこと。それがお前のやるべきことではないのか?」
雪華は刀を再び構え、臨戦態勢になる。
「我らは偉大なる閻魔王様にお仕えしているのだ。誇りを持ち戦え」
雪華はまた眸に斬りかかった。右、左と雪華は刀を振る。それを躱しながら後退する眸。あと、タイムリミットまで五分。
「諦めて逃げなって!私は死なないんだから。早く逃げて町人を見殺しにしなさいよ!アハハハハ」
眸は腹を抱えて笑う。
「雪華・・・。どうしよう。弱点がないよ・・・」
「まったくだ。弱点がまるでない・・・。ん・・・?弱点が・・・無い・・・?」
雪華は何かに気づいたような顔をして少し考え込んだ。
「何考えてんだよ?お前ら死にてえのかよキャハハハハ!!」
「雪華?何かわかって・・・?」
「・・・!」
雪華は無言で駆け出す。そして手にとったのは目玉があふれる箱だった。雪華はそれをひっくり返す。中から大量の目玉がヌルヌルボトボトと溢れた。
そして雪華はそのうちの眼球の一つを持った。
それは真っ赤な口紅のような色の眼球だった。