大江戸妖怪物語
「お待ちしておりました。紅蓮神門様。雪華様。村長がぜひともお話したいと申されまして」
侍女が恭しく頭を下げる。
「うむ、お主らの話し、ぜひとも聞いてみたい」
大きな羽扇子で仰がれながら上座に座る麗しの麗人。村長、夕場美藤は美しい紫の髪を風ではためかせ、堂々と座っていた。双の紫根の瞳が僕と雪華を映している。
「話といってもどんな話を・・・」
「この前来た時には大まかな話をしてもらった。もっと細かい話が聞きたいのじゃ。そうじゃな・・・。もう一度、話してくれんかの。お主らの素性、そしてこの村に山姥狩りをしにきた理由を。他にもたわいのない話をしてくれるとおもしろい」
切れ長の目がニコリと静かに笑う。美藤さんは自ら持っている扇子で少し口元を隠した。
「・・・僕は江戸で刀職人をしています。これが結構な老舗で。自分で言うのもアレですが、中々腕のいい職人です」
「自分で言う奴があるか。私は、こいつの家に居候中のものです。自分で言うのもアレですが、神門よりも剣さばきはいいです」
「自分で言う奴があるか・・・」
「黙れ。私の場合は周りから黙認されている」
よほどの自信家のようで。ええ、ええ。確かにそうですけれども。
「ほう・・・?お主ら、腕に覚えがあるのか。それは心強い。さぞ、山姥ごとき一撃で仕留めること間違いなしじゃな」
扇子で隠れた口元から溢れる微笑。
妖艶なその姿は、見てるだけでも魅了されてしまいそうで。てか、されてて。
雪華は目線を下に向けつつ話す。
「一撃で仕留められるかはわかりませんが、全力で戦いたいと思っています。そして、山姥退治は、あるお方からご命令を受けまして・・・」
「・・・それは、誰からじゃ?」
「そりゃあ、もちろん、閻m「江戸の警視庁のトップ、不動岡星煉より仰せ仕りました。私たちは刀の腕を見初められ、ここに行くよう言われたのです」
雪華はなぜか閻魔王の名前を出さなかった。そして、なぜか不動岡さんの名前を出した。
「・・・あぁ、不動岡星煉。名前は聞いたことがある。かなりやり手な男であると・・・。その名の通り、不動の精神を持つ男・・・」
「しかし、不動岡星煉からも無理はするなと言われておりますが、私たちはこの山姥退治に全力を注ぎたいと思っています」
美藤さんは扇子で顔を仰ぎながら口を開く。
「期待している。しかし、山姥は何をするかわからぬ。ぜひ、気をつけて欲しい」
間を置いてから美藤さんは言った。
「・・・ある意味、この村は山姥によって統治されているようなもの。私が村長になった背景にも山姥の存在がある。つまり、山姥によって動かされている村なのじゃ」
美藤さんは悲しげに遠くへ視線を向けた。