大江戸妖怪物語

山姥の手の上の村。それがここだ。僕は、山姥の無法地帯にいる。山姥退治なんてことがしれたら、真っ先に殺されるのは僕と雪華だ。いや、美藤さん?それとも源一さんや、村の誰かが犠牲に・・・?

「・・・侍女どもよ。食事の準備をして参れ。今から準備すれば月が出る頃には間に合うじゃろ」

美藤さんの言葉とともに、侍女たちは一斉に調理場へ向かっていった。

僕と雪華と源一さんと美藤さんが部屋に座っていた。

「ちょっと質問があるのですが」

雪華が沈黙を破る。

「・・・山姥とはどのような交渉を行ったのですか?・・・山姥と、真っ当な話し合いができるなんて、思えないのですが」

「・・・よもや、私を山姥と疑っているのか?」

美藤さんの眉毛がつりあがった。

「・・・残念じゃが、私は普通の人間。山姥とは少々争った。先ほど源一も話しておったじゃろ。私は肩に傷を負った。・・・あいつ、鋭い爪を持っている」

美藤さんは服の合間から肩を見せた。

「・・・ッ」


僕は息を飲んだ。白くて細い肩に、引っかき傷のようなもの。少し浮き上がったように見える傷跡は、茶色く澱んでいた。


「・・・驚いたよ。話し合いが終わった直後に襲われたのじゃ。油断も隙もあったもんじゃない」

美藤さんは服を元に戻し、座り直した。

「・・・山姥は鋭い爪を持ってて、人を食べる・・・。鋭い爪って、眸を連想させるなあ・・・」

目玉しゃぶり。作間眸。異常なまでに伸びていた爪は記憶に鮮明に残っている。
眸を思い出すと同時に、眸によって殺された死体・・・といっても晴朗だが、それも思い出してしまった。

「山姥かぁ。ほんと、できれば関わりたくない相手だけど、仕方ないよね」

僕が諦めたように溜息をついた。

「じゃが・・・期待しているぞ。お主らの活躍を」

広角を上げ、美藤さんは微笑んだ。









――――――しかし、僕は気づいていなかった。

この様子を外から見ているひとつの影を。フードを深く被り、拳を握りしめている影を。歯を食いしばり、睨んでいる影を―――――



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