大江戸妖怪物語
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「はッ・・・」
若干汗ばみ、湿った着物。夢の中とはいえリアルな頭痛だった。
「・・・雪華おはよう」
「おはよう。遅いな」
雪華は刀を握っていた。キラリと怪しげに光る。
「なんで・・・?刀を出してるの・・・?」
「山姥が来る気配がしたものでな。敵が来る前に準備をしておこうと思ったまでだ」
「ふうん。ふわ~あ・・・。ちょっと家の外に出て新鮮な空気でも吸ってくるかな」
僕は背伸びして立ち上がると、そのまま少し立てつけの悪い玄関戸を開いた。
その時、僕の横にあった柱に、細長いものが突き刺さった。これには見覚えがあった。昨日・・・山姥が投げてきた・・・ってことは!
僕が見上げた先には高く飛び上がった人が一人。
「雪華!山姥が来た!!!」
「やはりきたか。朝早くからご苦労なことだ」
フードを深くかぶった女は、二つの鉈を交差させ振りかざしてきた。雪華はそれを刀で受け止める。その反動で女は数メートル後ろに着地した。
「昨日のように逃がしはしない。初めに聞く。・・・お前は山姥か?」
フードの女は少しして口を開いた。
「・・・ええ、そうよ」
山姥だった。山姥は僕らにとびかかり、右手の鉈を振りかざしてきた。僕はそれを刀で受け止めた。しかし、左手にもった鉈が僕の下腹部を切り裂こうと降り下げられた。
「しまった!」
僕は慌てて後ろに避けた。少し服を掠めたが、怪我はしなかった。
「おい、山姥!なぜ人を食う!お前のせいで村人はおびえる日々を送っているんだ!!」
「人を食う・・・ですって?・・・あぁ、あいつの・・・」
山姥は少し首を傾げた。しかし、すぐにとびかかってくる。
「・・・あなたたち、人間にしては強いじゃない。普通だったら、尻尾巻いて逃げているところよ」
山姥はそういうと、すかさず僕の目の前に瞬時に移動し、腹を肘で殴った。僕の口からは涎が垂れた。
「おのれッ!」
雪華が山姥の背後を取った。しかし、山姥は素早く、雪華の刀が到達する前に宙返りをし、攻撃を避けた。
「雪月花!!」
雪華は氷の礫を山姥に向かって放った。
「波動氷壁!!」
雪華はさらに刀を思い切り地面に向かって叩き付け、そこからあふれる波動を氷にして、攻撃した。まるで氷の壁が山姥を攻撃しているようだった。
「轟火大紅蓮!!」
僕も雪華に続き、火の攻撃を繰り出した。
その攻撃を直前で山姥は躱す。
「・・・前言撤回。あなたたち、人間じゃないわね」
「人間じゃなかったら、食べないとでもいうの?」
挑発的に雪華は言葉を返した。
しかし、山姥の返答は驚愕のものだった。