大江戸妖怪物語

「・・・アタシ、人は食べたことないわよ」

「「・・・え?」」

一瞬、時が止まった。雪華も僕と同じように困惑の表情を浮かべている。

「アタシは何もやってないのに、いつもアタシのことを殺しに来る。アタシだって生きなきゃならないのよ。だからアタシはあなたたちを全力で倒す。それだけの話よ」

そういうと、山姥は再度攻撃を開始した。

「交差両刃!」

山姥は白い光を纏った鉈を思い切りそのばで空を切った。そして鉈から放たれた三日月状の光は僕の体を直撃した。

「ぐはあッッ・・・」

僕の体から血が噴き出る。思い返せば、邪鬼との戦いの中で、初めて直接的攻撃を受けて傷を負ったかもしれない。予想以上に痛みが押し寄せてきて、僕は悶えた。

「鉈剣山!!」

山姥はさらに追い打ちを仕掛けてきた。鉈が、まるで千住観音から攻撃を受けるが如く、鉈が分身したように鉈で突かれた。

「うっ・・・ぐ・・・」

僕は攻撃の反動で後ろの木に思い切り衝突した。木がメキメキと倒れ、衝突のすごさを物語る。

「残滅氷刃!!」

雪華は山姥のふいをつき攻撃を繰り出した。その攻撃は山姥に当たり、山姥はズザザザザッ・・・・と歯を食いしばりながら数メートル後ろに引きずられた。
山姥は口から出た血を拭うと、一瞬のうちに雪華の前に行き、刀を振り下ろした。雪華もそれを刀で受け止める。
雪華は相手の隙を見て、山姥の脇腹を思い切り蹴っ飛ばした。

「う゛ぅッ!」

山姥が飛ばされたところに砂煙が上がる。巨大な砂煙が僕と雪華もろとも包み込んだ。

「ケホッ・・・ケホッ・・・」

砂が気管に入り、苦しい。僕が咽ていると、カキン!と刃物が擦れあう音がする。おそらく、こんな視界のない世界で、雪華と山姥が戦っているのだろう。雪女と山姥が、互いの刃でぶつかり合う。

「紅蓮焔火!!」

僕は山姥がいるであろう場所に炎の鎌鼬を浴びせた。

「馬鹿神門!私を殺す気か!」

「ごごごご、ごめん!!!」

どうやら雪華に当たりかけたみたいだった。
砂煙が消えていき、二人の姿が露わになる。僕は息をのんだ。

山姥が攻撃を受けた傷があった。あの砂煙の中、雪華は山姥に一ミリ狂わず攻撃を続けていたのである。山姥の額からは鮮血が流れていた。

「まだ倒れないか」

雪華はそういって、山姥の顔面を回し蹴りした。山姥は鈍い音を上げながら、地面にたたきつけられた。
山姥の履いている下駄が、脱げた。

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