大江戸妖怪物語


「なッ・・・」

「えッ?!」

村人が美藤さんから距離を取る。

「・・・なぜ我が山姥だと?証明する証拠はあるのか?」

美藤さんは動じることなく、答えた。

「あるわ。その証拠が・・・靴よ」

「靴だと?」

雪華は後ろを向いて、蹴られた跡がある背中をみんなに見せた。

「これは昨日、山姥に崖から蹴られ、転落したときにつけられた、山姥の足跡だ。縦に長い楕円形の土汚れがついてるの」

「ふん。なぜそれだけで我だと疑うのかわからんな」

「それと、言っておくけど・・・この山に山姥がいたわ。彼女と仲良くなって情報を聞き出したっていうのがあるわ。札埜、来て」

陰に隠れていた札埜が僕のもとに歩み寄ってきた。
またもや村人から脅える声が聞こえた。

「彼女は正真正銘の山姥。事実、私たちは彼女と戦ったわ。そして、間違いに気づいた。彼女は下駄を履いていたのよ」

「下駄だと?」

「下駄の場合、土がつくのは上下二本のでっぱりの部分だけ。でもこれはまるーく泥がついてるのよ。下駄ではできないわ」

「じゃあ、先ほどのお主らの推理から、この村の中に犯人がいるんじゃないのか?そうすれば草履だって履いてるやつがいるじゃろ」

「この村の人じゃないわ。だって、この靴の跡、ちょっと湿っていたんですもの」

「湿っていた?」

「思い出してほしい。私たちがこの村にくる前、雨が降ったわよね。そして私たちが山姥退治に出たとき、村の土は乾いていた。これは、作物が成長しやすいように水はけのいい土が使われていたからよ。でも、山の中は水はけが悪く、土が湿っていた。つまり、これを蹴ったのは、山に入った人となるわ」

「だからどうした」

「この村の人たちは、山姥を恐れている。普段から山に入る人は少ない。そして何よりの証拠が・・・美藤さん、あなたの靴よ」

「なんだと?」


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