大江戸妖怪物語

普段の美藤さんから想像もできないような怒鳴り声だった。美藤さんは目を血走らせ、札埜に斬りかかった。札埜は避けきれず、左脇腹を斬られた。服に紅の血が滲む。

「我を怒らせたようじゃな・・・札埜。許さぬ・・・許さぬぞ・・・・・・」

「お前もこの村人も、皆殺しにしてくれるわ!!!!!」

「・・・・・・アタシは死んでも・・・ッ」

息を切らしながら札埜は叫んだ。

「この村の人たちは殺させないッ・・・!!」

その瞳は真っ直ぐ美藤さんを見つめていた。
村人たちはハッとした顔で札埜を見つめる。

「その・・・瞳。我は、ずっと・・・大嫌いだった」

美藤さんは札埜の首目がけて刀を振り下ろした。

「さらばじゃ、もう二度とその瞳をみないことを祈る・・・。死ね」

ガキィンッ・・・

その刀を受け止めたのは雪華だった。

「私たちは・・・二度とお前がこの世に姿を現さないことを望んでいるよ」

雪華は美藤さんの刀を弾き返した。

「ほぉ・・・。言ってくれるわい」

雪華はすかさず刀で美藤さんを斬った。美藤さんは避けたものの口の脇を切った。美藤さんは傷から出た鮮血を左手で掬い、ペロリと舐めた。その色っぽく艶やかな仕草は、どこか狂気を感じさせた。

「血を流したのは・・・札埜にやられた時以来じゃな・・・」

美藤さんはその行為をした後、眼をギラリと光らせた。

「お主は知っているよな?この傷が意味するものを」

「・・・・・・」

雪華は冷たくその様子を見つめていた。

「我々妖怪にとって、他の妖怪から傷つけられた痕というのは“弱さの刻印”だ。札埜から受けた傷は服によって隠せるが、これは消えぬ・・・。永遠に我はこの刻印と共に生きなくてはならぬのじゃ・・・。その刻印をつけたお主を殺さぬ限り、我の名は妖怪界の間で弱者として広まる。それだけはさせぬ、我は・・・我は、弱くなどない・・・!小娘・・・我は、お主を殺してあげよう!!!」

「それは願ってもない願いというものよ」

雪華は再度斬りかかった。それは美藤さんの刀に弾かれた。

「お主の顔面に傷をつけてやろう。それが致命傷となるぐらいの巨大で醜い弱者の傷を!!」

「それはこっちのセリフだ」

「闇灯断絶」

美藤さんは刀から黒い霧を出した。そしてそれは蛇のようにうねりだし、僕の右腕に巻きついた。

「ぐあッ!!!」

それは腕に深く絡み付き、しめつけて離さない。そしてそのまま僕は持ち上げられた。

「我を攻撃できるものならしてみろ。こいつの腕は一溜りもないぞ。さあ、どうする?」

「いたたたたた!!!」

「これは硬さを自由自在に操れる。柔らかくもできれば、すべてのものを破壊できるくらいに硬くもなる。これさえあれば、腕ごとき一本容易いものよ」

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