大江戸妖怪物語
「う゛あ゛ああああああああああああ!!!!」
狂乱の叫び声を上げて、美藤さんが向かったのは、村人たちのところだった。
「お゛のれぇッッ!!!!」
先ほどと同じ技を村人たちに繰り出した。村人たちは黒いものに押し潰れそうになっている。
「殺してやる!殺してやる!絶対に!!!」
もう、美藤さんの面影はなかった。そこには、邪鬼の姿があった。
「さぁ、先ほどのようにはさせまいぞ・・・。もう、殺してやるわ・・・」
息を切らしながら美藤さんは言う。村人たちは苦しそうな声を上げた。
「どうしよう、これじゃ、迂闊に攻撃だってできない」
僕らがたじろいでいる間にも村人たちは圧死の危機を迎えている。手をこまねいていたが、その時美藤さんが小さな悲鳴を上げた。
美藤さんのほうを見ると、なんと亜紗子さんが小刀で美藤さんの右脇腹を刺していた。
「亜紗子さん!!」
「姉さんのッ・・・敵だッ!!」
(姉さんの・・・敵・・・?)
亜紗子さんは美藤さんをもう一度切った。
「こんのッ・・・」
美藤さんが振り返り亜紗子を殺そうとした。その時、目の前を茶色い影が飛び立った。
「コケコケ!!!コケッコー―――!!!!!!」
なんと茶々が美藤さんの顔面に飛びかかって、顔を爪で鷲掴みにしていた。
「み、見えない!!退け、このクソ鶏がぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
「コケッ!!コケッコー!!!」
さらに茶々は美藤さんの顔面を突き始めた。美藤さんが暴れまわっていると茶々はフワリと飛んだ。
そして、源一さんが右手で何かを投げた。源一さんは左手こそ圧迫されていたが、右手は自由だったのである。
「くらえ!」
その細くて長いものは、振り返った美藤さんの左眼球に刺さった。それは鋭く尖った木の棒だった。
そう、これは札埜と戦ったときに、彼女が僕たちに投げたもので、僕がついでに持っていたのである。源一さんが美藤さんに投げ飛ばされた時、これを渡しておいたのだ。
村人たちは黒いものから解放された。美藤さんは左目を抑えながら声を押し殺すような叫びをあげていた。いや、もう痛すぎて声が出ないのか。
「家畜が・・・何をする・・・」
「家畜にすら傷をつけられるお前の弱さが露呈しただけだろうが!!」
源一さんは叫んだ。
今度は僕らがとどめを刺す番だ。