大江戸妖怪物語
しかし、今は暑い。猛暑というのか、酷暑というのかわからないが、四十度を遥かに超している気がする。服も、ジトジトと汗で湿ってきた。
「神門さん、暑いですか?」
木南は扉を指して言った。
「水車小屋の下に流れている水で水浴びとかどうですか?結構気持ちいいですよ??」
「ぜひやってみるよ」
僕は速攻で小屋を飛び出し、そして着物を脱ぎ水に浸かった。
「ふおおおお!!!冷てえ」
まさに天国だった。僕は水に横たわった。少し水深は深いものの、溺れるような深さではない。僕は目を閉じた。
「気持ちいいですか?」
僕が目を開けるとそこには蹲って僕を見つめる木南の姿があった。
僕は自ら上半身だけを起こす。
「うん、とっても」
僕は髪の毛から滴ってくる水を一気に掻き上げた。
「あ・・・」
木南は言葉ともいえない言葉を言って黙った。頬が少し赤いが、熱中症にでもなったのか。
「大丈夫?熱中症??頬が赤いけど・・・」
それを言うと木南は両手で左右の頬を隠した。
「水に浸かれば??」
「ヘエッッ?!?!?!」
素っ頓狂な声を上げる木南。そしてワタワタと慌て始める。
「・・・つ、つまり服を脱いでって・・・い、いや・・・そんなことは・・・」
「木南?何か独り言??」
「うああッぅ・・・!!!なんでもないです!!!!!」
足をジタバタさせながら木南は俯いた。
「だから、足だけでも浸かれば涼しくなるんじゃないかなって思うんだけど・・・」
僕は改めて言い直した。
「あ、そういうことですか・・・」
木南は落ち着きを取り戻した様子だった。