大江戸妖怪物語
「ちなみに、アタシは梅農家やっててー。これ、アタシの家で作った梅干し。はい、あーん」
「あ、あーん?」
僕はその場の勢いにのまれ、口を開けた。僕の口の中に程よい酸っぱさが広がる。
「う、うまい・・・」
「でっしょーーー?!だから、結婚したらぁ・・・その・・・刀屋を営む傍らで、梅干しでも売ろうかしら・・・」
「結婚する前提になってね?!」
「毎日毎日・・・赤紫蘇の香りが漂う中で刀を売る・・・。興奮してくるううううわああああああああ!!!!!」
「興奮しねーよ!!紫蘇の香りは好きだけど、かぎ続けるのは遠慮します!!」
「なんだ・・・騒がしい・・・」
雪華が頭を押さえながら出てきた。
「雪華・・・」
雪華は二人を見て、一瞬何事かわからないような顔をした。
「神門さん?!やっぱりお付き合いしてたんですかー?!」
「だからしてないって!!」
ダメだ、なんかややこしくなってきた。
「そこの女、なんだか騒がしいが何事だ?」
雪華は黄梅を見つめた。
「アタシの名前は酒本黄梅!梅って呼んでね!キャハッ!!」
黄梅は雪華に近寄った。
「それにしても・・・色白ー!!ちょーうらやましい!!髪の毛も白いしー!」
「白髪ではない、銀髪だ」
雪華は黄梅のテンションの高さについていけないようだった。
「小さいことは気にしないでいいじゃない!ところで、そんなお江戸の刀屋さんがなんでこんな田舎町にいんの??」
「あー・・・それは」
僕はこれまでの経緯を黄梅に説明した。
「・・・・・・ってことは」
黄梅は話を聞き、目を光らせた。
「お二人は人間じゃないってこと?!やーん、そういう展開萌えるぅ!!」
「あ、僕は一応妖力を持った人間なんだけど・・・」
「今までそういう非科学的なこと信じてこなかったけどさ。最近の異常気象と言いやっぱり怪異が関わってると思うようになってきたのよねー」
黄梅は梅干しを食べながら話す。
「おかげでアタシの商売も火の車さ。梅は敏感だから、気温が変わるとすぐにダメになっちゃうし。その異常気象の原因作った妖怪見つけたらぶん殴ってやるって感じ!!」
黄梅は怒り心頭らしく、ムキ―と叫んだ。