大江戸妖怪物語


「それで手がかり的なものは掴めちゃってる系?」

「それがまだなんだ。生憎、まだ来たばかりなんでね」

「そっかぁー。まっ、しゃーないよね~。あ、そうだ!」

黄梅は指をパチンとさせた。なにか閃いたようだった。

「長老なら知ってるかも!昔からここに住んでるし!!」

「長老って言っても黄梅のおじいちゃんだけどね」

木南はボソッと補足をつけた。

「そうと決めれば善は急げっていうし!レッツゴー的な!!」

「え?!今から行くの?!」

「あったりまえだっつーの!さっさと行くよーん!」

黄梅は走り出した。
僕と雪華も後に続く。そして木南を僕は抱き上げた。

「み、神門さん・・・」

「何?」

「い、いえ・・・なんでも・・・ないです・・・」

木南はまた俯いてしまった。

「そういえば、さっき何か言いかけてたけど・・・あれ何て言おうとしたの?」

それを聞くと、木南は顔を真っ赤にさせた。そして手で顔を隠す。

「もう・・・神門さんってば、意地悪です!!」

「怒られた?!」

そうこうしている間に黄梅の家に着いた。しかし、僕は少し違和感を覚えた。

「え・・・?寺・・・?」

黄梅が走るのをやめたところは、鬱蒼とした林の中の寺だった。石畳が隙間なく敷かれ、大きな仁王門が聳え立っていた。

「ここがアタシの家、『音龍寺』!まあ、アタシは次女だから継がないけどぉー」

確かにこんなギャルが住職になったら嫌だわ・・・。

「さてさて!おじいちゃんいるかしらーん?おじーちゃーん??」

静まり返る寺の中を走り回る黄梅。

すると寺の本堂の扉がガラリと開き、老人が出てきた。

「おお、騒がしいと思ったがやはり黄梅じゃったか」

「きゃっはー!おじいちゃん久しぶりぃー」

真面目そうなお坊さんに抱きつくギャルって・・・とんでもない画だな・・・。

「そうだそうだ!今日来たのは、おじいちゃんに聞きたいことがあんの!!」

「聞きたい事じゃと??」

「うん!ほら、神門さん、雪華さん!それと・・・そこで伸びてる木南!!こっちこっち!!!」

僕はぐったりしている木南を抱き上げて本堂へ入った。
老人は座布団を用意して、僕らを座らせた。

「ワシの名前は勝常と申す。それで・・・そこの雪女さんは、どういった経緯でこの武蔵國まで?」

「え?!」

僕と雪華は顔を見合わせた。今まで、視ただけで自分たちが妖怪とバレたことはなかったのに。

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