大江戸妖怪物語

神門「ら、らいじょうぶれす・・・・」

??「大丈夫じゃねーって!!鼻血出てる!早く手当しないと!!」

その人は僕を無理やり部屋の中に入れると、近くにあった椅子を引きずりだし僕を座らせた。そしてティッシュを鼻に詰める簡易的な治療を受ける。

??「すまん!俺ここで働き始めたばっかで・・・、で、しかも2人部屋って慣れなくて・・・!つい、確認しないで思いっきり開けちまった!すまん!!」

その人は手を顔の前で合わせ謝罪をした。

神門「あ、あー・・・気にしないでください。不注意だった僕も悪いので・・・」

??「ほんとうにごめんな・・・。あ、俺の名前は絃。よろしくなっ」

絃と名乗ったその人は、特徴的な八重歯をキラリと光らせながら笑った。

神門「僕は紅蓮・・・いえ、紅です。よろしくお願いします」

絃は非常に気さくな感じで話しかけてきた。

絃「俺も入ったばっかだからさ、一応お前より先輩って立場になるんだけど、正直いって似たようなもんだから、何かあったら相談しろよな!」

絃は口角を思い切り上げながら笑う。どちらかというと、絃は子供のような雰囲気が漂う人だった。

神門「えーっと、絃さんは・・・何歳ですか?」

絃「俺は・・・年齢がわからなくてさ」

神門「え?」

絃の表情が少し曇った。なにかまずいことでも聞いてしまったのか。

絃「はいはい!この話はやーめ!それより、紅はどうしてここで働こうと思ったんだー?」

話を変えられたか。しかし、困った。働こうとした理由が思いつかない。馬鹿正直に『月桂樹の本性を暴きに来ました』なんて言えない。

神門「俺は・・・、あの、単純に稼ぎたくて・・・」

適当な理由をつけてその場をやり過ごすことにした。

絃「うんうん。だいたいこのくらいになれば、独り立ちもしたくなるよねー。・・・ってか、ちょいちょい!!」

絃は僕の腕を掴むと小さい声でコソコソと話し始めた。

絃「あの雪っていうの女だろ?あれってもしかしてお前の彼女??」

やはりいつかは聞かれると思っていた質問が来た。

神門「えっとね、彼女じゃないんだけど・・・」

僕が返答すると絃は顔をパーッとさせた。

絃「ほんとうに!?ほんとうなのかい!?いやぁ、もったいないなぁ、あんなに可愛いのに~」

どうやらこの絃という男、雪華に少々熱があるらしい。

絃「やっぱりさ、あーんな可愛い女の子だったらさ、・・・いろいろといいことあるかもねー」

ふふふ、と絃はにこやかに笑いながら話す。


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