初昼の儀式

 蒸し暑い6月。小雨も散っている。雨よけのないこの場所には誰一人来ない。黒いキャスケットを被り黒いトレーナーに黒いジーンズに黒いハイヒール、黒い日傘。全身黒ずくめの私に、近寄るのはふてぶてしく人なれした雀位で、この子等くらい厚かましく生きていければいいよなと思いつつも、鳥は苦手なんだよね。7センチのヒールでドン!と地面を突付く。が、ヒールが華奢なせいで迫力がないもんだから、雀たちはちゃっかりい続ける。
 
 自動販売機で買ってきた100%のりんごジュースを飲みながら、英文学のレポートのテーマ、シェイクスピアのお気に召すままを読んでいた。この手の本を読むのは嫌いじゃないが、貢をめくるのが惜しいくらいに面白くてたまらないといった感じも別段しないから、ページの進み具合が亀である。



< 3 / 47 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop