ビッグマンズ
試合開始
  人が、何かに感動する時、音楽や絵なんかでも、「上手い」からと言って、必ずしも、それが人の心を動かすとは限らない。
 きれい事や「要領がいい」などとは、むしろ正反対の、自分の醜い部分をさらけ出してこそ、ではないだろうか。                                   




 午前10時。シェフパンチの朝食ブッフェが終了し、残った料理がウエイターにどんどん下げられてくる。ブッフェでは、こういった余りを、いかに出さないように、最小限に留めるかが重要だ。
 だから、ホールに任せっきりにしないで、料理の減り具合や客の動きを、調理場サイドも把握して、出す量を調節していく。


 「なによ!あんたが、もう一台出せっていうから、私わざわざつくったのよ! まるまる残ってんじゃないのよ!これ、どうすんのよ!」
 終わりの方で追加がかかった、スクランブルエッグが、ほぼ手付かずで下がってきてしまい、阿部が、オーダーしたウエイターを、すかさずなじる。


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