ビッグマンズ
 一日を始める前にここで、メンバー紹介としよう。

 まず、このキッチンを取り仕切るチーフの大村。最上階のフレンチレストランで、総料理長の片腕として活躍。その実力が評価され、三十九歳の若さでセクションチーフ任命される。そして、幸か不幸かその配属先がこの南館メインキッチンだったのである。            人の上に立つだけのことはあり、実に他人の事をよく見ている。キレるとすぐ手が出てしまうのがたまにキズだが、とても義理人情に厚い男だ。                     「百獣の王」は、この人でなければ務まらない。



  そして、アシスタントシェフの永井。もとは大手電気メーカーに勤めるサラリーマンであったが、一転してコックの世界に足を踏み入れる。
 想像を絶する苦労の末、ここまで上り詰めるが、そのクセのある性格が災いして社内の敵の数は数知れず。




  次に、主任の高田。国士舘大学出身ということもあり、実に男気が強く、礼儀を重んじる。たぶん、ケンカならこの男の右に出るものはいない。
 「健全な精神は健全な肉体から」が口癖。調理師学校からの研修生全員に、新宿中央公園を走らせるなど、彼の武道派ぶりがうかがえるエピソードは後をたたない。
 自称「ロベルトバッジオに似ている」




  ベテラン社員の市岡。競合他社である「ホテルP」から来た、かなりの実力派。
[仕事ができる」という事と、「調理技術に優れていて、うまいものが作れる」とは、全く別の事だと私は思う。
 この人ほど調理技術に優れた人を私は見たことがない。包丁研ぎも、私は彼から教わったが本当にすばらしい。
 だが、忙しくなると、狂ったようにテンパる。





 冒頭にも登場した佐々川。十年前に交通事故に遭い、数週間の間、意識不明の重体に。
 奇跡的に回復し、職場にも復帰。しかし、後遺症により味覚と嗅覚は現在も回復しきっていない。
 アシスタントシェフの永井と同じ年齢で、事故に遭うまではバリバリの第一線で活躍していたが、現在ではほとんど朝食のみの担当になっている。
 レタス等の葉ものの管理や、フルーツを客前でカットするなど。
 彼の胸中は計り知れない。





 




 


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