空耳此方-ソラミミコナタ-

炯斗は言乃を抱き上げたままに階段を登る。
下で見る大人は感心したように目を見開く。

「やるわね、アイツ」

「やっぱり私がやらんでよかったな」


無責任な大人の生暖かい視線にちょっと周りを見回すが、首をひねりつつ前を向く。

そんなこと言われているとは露知らず、炯斗は言乃を部屋へ運んだ。


部屋では恵がベッドの準備を整え終えて待っていた。
未だ気を失っている言乃を青い顔で見つめる。

炯斗はその脇を通り言乃をそっと寝かせた。


何だか、二人にした方がいいかな……?


恵はなるべく音を立てずにドアに向かう。
そしてそろりとノブに手をかけた時、突然炯斗が声をかけた。

「恵」

「…ふぇッ!?え、何?」

安心仕切ってたおかげで大げさに飛び上がった。

恥ずかしい、穴があったら入りたい!

慌てふためく恵に炯斗はクスリと笑う。

「大丈夫か?」

「……ごめん、平気」

炯斗はニッと笑うが、心なしか優れないように見える。だが、それは恵も同じだった。

「何があったか……話してくれる?」

「…うん」


やけに炯斗が優しいことが、何だか気まずかった。


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