空耳此方-ソラミミコナタ-
恵は備え付けの机から椅子を引っ張り、ベッドの脇に座る炯斗と向き合う。
手を握って落ち着いてから、静かに口を開いた。
「ごめんね、はっきり言って……よくわからないの」
「わからない?」
炯斗は首を傾げる。
恵は先に謝った上で、ありのままを話した。
炯斗は腕組みして唸った。
「……恵にも見えたんだから、そいつは人な訳だよな……」
「た、多分…」
炯斗は唸りながら天井を仰ぐ。
そのまま体を重力に従って、ボスッとベッドに着地。
「……そこ私のベッドなんだけど」
「いーじゃん、どうせシーツとか変えてあるよ」
「そういう問題じゃなくて!」
炯斗はぶーと口を尖らせて起き上がった。
「ま、そんなに気にしないけどね」
「じゃ言うなよ!!」
ペロッと舌を出す恵。
悪戯っぽく笑った顔はまたなかなかかわ……いやいや、今そんな空気だったっけ?
「……誰だし」
「……知らないよ…」
二人の間に沈黙が落ちる。
小さく呻き声がそれを破った。