何度忘れようとしても
私は自分の大きな声で目を覚ました。

激しい動悸。
目のふちは溢れた涙ですっかり濡れている。

寝返りを打つと見慣れた部屋の色彩が飛び込んできた。
そして少しの時間を置き、リアルな現実が寂しさとなって私を襲った。

「また、孝昭の夢見ちゃった・・・」

ぼそっと声に出して言ってみる。
言ってみるとまた涙が情けなく頬をつたった。

憂鬱な気持ちで枕元に目をやると、目覚まし時計は7時50分を差している。
10分後にはジリジリと音を立てて、私は叩き起こされる予定だった。




< 3 / 222 >

この作品をシェア

pagetop