本と私と魔法使い
「君は…サリサと限りなく等しいのかもしれない。…君こそが、探し求めたー…」

彼は私の耳に手を当てて言った。
夕暮れのような髪が視界のふちに映る。

「今は眠れよ、…あなたの探すモノはいずれ御前に」

彼が手をはなしときには、もうあの声は聞こえなくなっていた。


「あなた、は…誰?」

「いつかまた会えるから、その時に、ね。アイリスによろしく」


彼は優雅に笑って去って行った。風が吹いて、もう一度見た時には、
その背中はみえなくなっていた。
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