Tolie.
「 ねぇ、美優ちゃん 」
手の力が少し強くなって
落としていた視線をあげると
”答えて”って急かされて
無意識に、私の口は動いてた。
「 私にできる、逃げることって
それくらいしかなかったんです 」
囚われたあの日から、
逃げようともがいたって
無駄なことが分かって
いつからか、気持ちだけでも
どうにか逃げられるように
私の思考は切り替わってた。
「 どんなに辛いことをされても
愛してれば、愛されてれば
少しは温かいものになる。
そんな錯覚さえほしくなって
歪んだ愛って言うのがあったんです 」
信じたくない現実ばかりの
頭の中に少しでも優しい
記憶がほしくて、ほしくて。