短編集

と俺の耳に微かに届くような声でつぶやいた。そして少しの間気まずい空気が漂っていたが、俺が話を持ちかける。

「そ、そういえば自己紹介まだだったな。俺は、桜葉 御幸(さくらば みゆき)だ。16歳。ポジションはキャッチャーな」

「あ、え、えっと静音 桜(しずね さくら)16歳。」

「おうよろしくな」

「う、うん」

そういって軽く頭を下げる二人。

「で・・・さっきなんで俺の上から降りれなかったんだ・・・?」

ここでさっきの質問を投げつけてみる。すると表情が見る見るうちに暗くなっていってしまう。

「あ、いや、その、話したくないなら言わなくてもいいぞ?」

「ううん。話すよ。少し暗い話だけどいい?」

「あぁ」

あ、そういえば部活・・・まぁ初の居残り受ければいいか。ホントに今日は初づくしだぜ。

「まぁ見てわかるとおり、病人で、脳のどこかが悪くなって下半身の神経がやられて動かないの」

そういって桜は自分の足を眺め、昔の懐かしむような顔をして、

「昔はこの足であんなに走ってたのになぁ・・・」

と記憶を掘り返しているらしい。

「まぁ、それで手術もできないくらいひどくなってるらしくて、余命長くて5年って言われてから、3年たった」

そう残された時間は長くて2年。俺は何も言うこともできず固まってしまう。俺のかける慰めの言葉も逆に桜を気づつけてしまうと思ったからだ。



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