短編集
試合が終わり、道具の片付けや、グラウンド整備が始まる。俺は道具の片付け組だった。先輩の仕事をなるべくなくさなくてはいけないため、一年生たちは先輩が荷物を運んでいたら進んで変わる。だから俺も先輩たちと変わる。そのときに、
「ナイバッチ!」
「場外ホームランとかやるじゃん」
「あの時の相手のピッチャーの顔がやばかったぜ!」
「今度バッティング教えてくれ」
と、褒められたりしていた。先輩からバッティング教えてって言われても困る。まぁその度に、
「ありがとうございます!」
と帽子を頭からはずして言う。やはり先輩たちから言われると嬉しい。かおがにやけてそうだ。
するとばっしーんと音を立て、背中に強い衝撃がきた。
「御幸!ナイスホームランだったぜ」
と背中を叩いた張本人で同い年の、一條 暁が俺の肩を組みながら話してくる。
「サンキュー」
暁は投手で化け物クラス。現に一年なのに先発していて相手チームを押さえている。急速147kmで変化球は6種類投げられる。しかもコントロールも抜群で投げて欲しいところに、きちっと投げてくれるため、捕手としてリードのしがいがあるし、楽しい。