大人的恋愛事情
それから三十分、相変わらず部長の愚痴を聞き続け、酒を飲み続ける繭にそう言ったのはこの状況に俺が苛立ち始めたからだ。
きっとまったく面白くもないだろう繭は、それを微塵も顔には出さない。
だから酔って愚痴を零し続ける部長が気付くはずもない。
それでも繭の面白くないような感情は隣に座る俺に、微妙に伝わってくる。
だからと言って、誰かに助けを求めるわけでもなく、他の人間に振るわけでもない。
「なあ、ここ抜けて他で飲みなおさねえ?」
総務の部長がトイレに立った瞬間、思わずそう声を掛けていた。
他の人間に聞こえないように、小さく囁いた俺に、繭が視線を向け一瞬怪訝そうな顔をする。
断られたら断られた時……。
そう考えていると、酔いのせいか少し潤む目で軽く頷いた繭。
「いいですね」