crocus
外にいらっしゃるのかと思って、後ろを振り返ると視界いっぱいに大きく主張している胸が飛び込んできた。
「っ!?うわわ!」
黒いTシャツは苦しそうに伸びていて、ビックリしながら視線を上げると長い黒髪を1つに結わえた女性がタバコをくわえていた。
「チッ……ばれたか」
悔しそうに舌打ちした女性は猫が引っかくような仕草をしたまま両手を上げていた。
「あ、ちえりさん!おはよー!ちゃんと来たよー。……若葉ちゃん、この人が見た目と名前のギャップが激しい上原ちえりさん。上原いちご農園のお嫁さんで、姑さんと戦争勃発中だよ」
若葉とちえりさんの間に入って紹介してくれた誠吾くんは、間髪なくちえりさんに頭を叩かれた。
「バカタレ!適当言ってんじゃねぇよ!今は、うまくやってるっつーの。……まぁよろしく、えっと……」
若葉はハッとして、パパッと身なりと整えてから深々と頭を下げた。
「初めまして!クロッカスの従業員になりました、雪村若葉です!素人ですが、今日はお世話になります。ご指導よろしくお願いします!」
「…………」
長い沈黙が続いて、なにか失敗したかなと不安になって顔を上げた瞬間にガバッとちえりさんが覆いかぶさってきた。