crocus
馥郁とした香りの正体はタバコといちごだろうか、魅力的な香りに包まれてクラクラした。
「もー!なにぃー?この犬っころ!つか、昨日聞いたときはまた男が入ったと思ってたわー。はぁぁ……」
飼いたい……、と耳元で呟かれて、ブワッと耳が熱をもった。
いろんな部位が柔らかいちえりさんに圧縮されていると、誠吾くんが「チョッキン」と言って、2人の間に両手を入れて引き離した。
すばやく誠吾くんに隠すように、両腕を掴まれる。すると、ちえりさんはニヤニヤしながら誠吾くんを、わざとらしくけしかけた。
「ふぅ~ん。誠吾もそんなことするようになったかぁ。ふぅ~ん、万年花畑男がねぇ……大事な子が出来ると変わるもんだねぇ~」
「……ち、ちえりさんが、若葉ちゃんを困らせるからでしょ!」
誠吾くんは顔を真っ赤にしながら言い返した。こんなにも誰かの言葉で狼狽えている姿は初めて見た。
「クロッカスの従業員ってことは、あの変態オーナーが雇ったんだろ?……あいつも『まとも』って言葉をやっと覚えたか」
ちえりさんは誠吾くんの言葉を丸っきり無視して、疑問を投げ掛けた。