crocus
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いちご栽培をしているビニールハウスは3棟づつ連なった施設が4つあって、全部で12棟あった。
若葉達は6番目のビニールハウスに入った。中は大変広くて、聞けば奥行きは60メートルもあるのだそう。
いつかテレビで見たことのあったいちご狩りの様子は、人がいちごの畝の側に屈んでいた。
だけど、ここでは屈まなくてもいいように、鉄パイプを組んで作られた畝が腰の高さで栽培してあった。車椅子の方でも楽しめるようにと、畝と畝の間隔も広くしてあるのだとか。
「若葉ちゃん。おいしいいちごの見分け方教えるから、おいでー」
指先4本をクイクイッと曲げて、若葉を呼んだのは誠吾くん。返事をして駆け寄ると、若葉の背後にいた、ちえりさんが言う。
「ふっ……。そこ、私が教えるとこだろうが。……あ、そだ。あとで、上原家の親戚陣が手伝いに来ると思うから、そっちにも指導よろしく頼むわ。誠吾先生!」
「えー!?理不尽!なんでボクがー?やだよー。若葉ちゃんとは、教える約束してただけだも──」
「家族連れ多くてさっ!忙しいんだよな……。ほら今は学校が春休みだろー?はぁ……」
誠吾くんの言葉を食いぎみに、肩を反対側の手で、グイグイ押してマッサージをするちえりさんの総スルースキルは隙がない。