crocus
過去の出来事を教えてくれた次の日、翔さんと祥さんとの再会。重なった偶然を、必然に仕立て上げれば、仲直りの追い風が吹いてるかもしれないと美化した。
当事者の3人にしか分からないこと、思っていたよりもずっと複雑な心境であること、分かったつもりで何も分かっていなかった。
人の気持ちは、簡単に理解出来るほど単純なものじゃない。
誠吾くんによって向けられた怒りよりも、自分のうぬぼれと、無神経さに腹が立って悲しくてどうしようもなかった。
「大丈夫?…若葉ちゃん」
背後からちえりさんの声がする。慌てて涙を拭って、誤魔化すように笑いながら振り向いた。ペラペラ話していい事情でないことくらいさすがに分かる。