crocus
今ので分かるなんてと、先程からのみんなの以心伝心に軽い感動を覚えながら、若葉は上矢さんに優しく微笑んだ。
「すごい特技だと思います!細かい変化に気遣いが出来るってことですよね?」
「$&%£#@☆~!!」
上矢さんはやはり律儀に口を閉じたまま喋り、さらに若葉に抱きつこうとした。……が、すかさず桐谷さんが腕をピンッと伸ばし上矢さんの額を鷲掴みした。
「そんなにオーナーに処刑してもらいたいのか?」
「ならば離すが?」と、ひと睨みすれば上矢さんはひきつった笑顔で首を振り、後ろ歩きで離れた。
「あ、若葉。銭湯はここな」
ここまで一言も話さず、カラフルなヘッドホンをして音楽を聴いていた琢磨くんが頭上にある銭湯の看板を指差した。
「ほんとにカフェから近いんですね」
10分も歩かない内に到着した銭湯は木造建築で故き中にも温かみがあり、老若男女の入浴客が笑顔で行き来していた。