crocus

◇◆◇◆◇◆

「ふぅ~…。さっぱりしたぁ~」
お風呂から出ると思わず漏れた感想。

思えば昨夜のどしゃ降りの分も洗い流したのだ。スッキリした若葉はオーナーに買ってもらった下着や衣服を身につけていく。

「──ははは!だってさー…」

この声は琢磨くんだ!男性陣を待たせていることが分かれば支度を急いだ。

「すみませんっ!お待たせしました!」

テレビの前のテーブルを囲むように湯上がりの5人が待っていたのだが、妙に色っぽくて若葉は頬を染めながら謝罪した。

「大丈夫よー…って!髪、まだ全然濡れたまんまじゃねーかよ!」

「ほんほぉらー!」

ピースしながら返事をした上田さんの驚く声に、上矢さんがアイスを食べながら若葉の頭を見た。

「あ、お待たせしちゃ悪いと思ったので…。大丈夫です。そのうち乾きますから!」

肩に垂れている濡れた髪を触りながら笑って明るく言うと、琢磨くんが顎を手のひらに乗せテーブルに肘をつきながら軽く叱ってくれる。

「ばーか!そんなん気にしなくていいから、戻ってドライヤーしてこいよ。いつも俺らここでたむろしてから帰ってんだし!なっ?恵介!」

「なんで僕に振るかな…」

若葉からは見えないが、琢磨くんのニッカニカの笑顔とは正反対に、橘さんは恨みがましい表情をしている気がする…いや、そうに違いない。しばらく間が空いたあと、1つ深いため息をついた橘さんは振り向かずに手を振る。

「まぁ、そういうことだから。行ってきなよ」

その言葉に他の4人の男性陣がふわりと優しく笑うものだから、若葉はなんだか胸に熱いものが宿ってしまい、瞳を潤ませながら礼を言った。

「あ、ありがとうございます!すぐ戻りますね!」

「感動屋さんだね~」

「感受性が豊かなんだろうなー」

上矢さんと上田さんの言葉に照れてしまって、潤みそうだった瞳はすぐに引っ込んだ。

「行ってきます…!」

ぎこちなく足を踏み出してパタパタと再び女湯へ向かった。


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