crocus
琢磨くんの顔は真っ青になっていて、ゆらりと体が揺れたかと思えばそのまま膝をガクリと床に落とし、カタカタと震えていたのだ。
持っていた皿はガシャンと音を立て割れてしまった。
若葉はそんなことはお構いなしに慌てて駆け寄り、琢磨くんと同じ視線になるように跪いた。
「琢磨くん!琢磨くん!?どうしたんですか?大丈……」
声をかけながら、顔を覗き込めばドクンと胸が跳ねる。
琢磨くんの呼吸は激しく乱れ、瞳孔が異常なほど開いたり閉じたりを繰り返しているのだ。
いったい何が……。誰かを呼ぼうにもこの家には2人だけ。近所の人に頼もうにも、目を離した隙に取り返しのつかないことになったら?
最悪の事態を予想し、それを否定しようと頭を振り自分を落ち着かせる。
もし私が琢磨くんだったら……。一つしか思い浮かばなかった方法で今にも消えてしまいそうな目の前の体をぎゅっと抱きしめた。
とん、とん、とんと心臓の音に合わせて背中を叩いてみた。
私はここにいます。
大丈夫、大丈夫……。
琢磨くんにも、自分にも言い聞かせるように、想いが届くように。
見た目よりも筋肉質な身体に手を回し、大きな背中に何度も何度も伝えた。