crocus

しばらくそうしていれば、体の震えが弱まり、荒い呼吸が収まってきたように思える。途端に力が込められた腕に若葉の肩が押されて体が離れた。

苦しそうに顔を歪めていながらも、薄く開かれた瞳に自分が映っていることに一先ず安心した。その表情のまま優しく問いかけてみる。

「琢磨くん?大丈夫ですか?少し落ち着きました?」

汗をじんわりかいている琢磨くんはまだ少し苦しいのか問いかけには答えず、ハッハッと呼吸を吐きながら唇をゆっくり動かし形を作っている。

その動きを読み取れば、『わかば』と形作っているように思えた。

今の分かりましたよ、と笑顔で答えれば琢磨くんは眉をハの字にして切なくなる程、優しく微笑んでくれた。

安心させたかったのに、逆に安心させられてしまった。

琢磨くんは何かを思い出したように、ゆっくり若葉の肩に乗せていた手を自分のスウェットのポケットの中に入れて、ガサゴソと探すように動かしている。

探り当てたのか、琢磨くんがそのまま手を引き抜けば、出てきたのは携帯電話だった。

震える手でボタンを押していて、若葉の位置からでは画面に当たる光が反射していて見えにくいが、文章を作っているように思える。

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