crocus

固唾を飲んで見守っていれば、琢磨くんが少し緊張した面持ちで携帯電話の画面を若葉に向けた。

その緊張が若葉にも伝わってきたが、琢磨くんの顔色が元に戻っていることに気づけば、やんわりとながら安心して、向けられた携帯電話の画面に表示された文章を黙読した。

その内容にぶるっと体が震え、喉にぐぐっと熱いものが込み上げてきた。

『おれ かみなり こわい いやなこと おもいたして しはらく みみか きこえなくなる  わかは いてくれて よかつた ありかとう』


雷を見ると嫌なことを思い出して、耳が聞こえなくなる?

じゃあ、今の琢磨くんは何も聞こえていないの?

それはどんなに不安で恐い世界なの?

濁点が抜けたひらがなのみの文章に琢磨くんの状態の辛さが分かる。それなのに感謝の思いを添えてくれたのだ。

喉から鼻、目頭に駆ける熱いものが若葉の視界を歪ませていく。

この状況で何が出来るだろう。どうすれば大丈夫ですと、安心させてあげられるだろう。

若葉は目をぎゅっと瞑り、両拳にクッと力を入れ、琢磨くんの立場になって一生懸命考えてみる。



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