crocus
若葉はゆっくり、琢磨くんの正面に戻ると、携帯電話を借りて、顔をぐしゃぐしゃっと歪めながら震える手で文章を作った。
『私のせいでごめんなさい なにも知らなくてごめんなさい ここまで頑張って来てくれて、ありがとうございます』
携帯電話の画面を見せると、琢磨くんは拾う手を止めて、少し呆れたように眉間に皺を寄せた。
そして琢磨くんは右手を服にゴシゴシと擦り付けた後、若葉の頭をポンポンと優しく叩いた。
そのことにひどく安心して、張り詰めていたものが緩んだ瞬間、目から雫が溢れてしまった。
琢磨くんと視線が絡むと、その両手がそのまま背に回ってぐいっと若葉の体は引き寄せられた。
肩に頭一つ分の重さがのしかかる。琢磨くんのツンツンとした髪の毛が首筋に当たってくすぐったいが、安心している表情が部屋の隅にあるスタンドミラーが映し出していた。
こんなことで不安を拭えるならと先ほどのように琢磨くんの背に腕を伸ばし背中を鼓動のリズムに乗せて叩いた。
いつの間にか涙は止まっていて、伝った跡だけが少しひんやりした。