あの子の好きな子
告白宣言
【告白宣言】
ここのところ私は、先生といて緊張したり苦しくなったりしてばかりだったけど、あの約束をしてからは妙に落ち着いている。先生と生徒のラインをなくそうと奮闘していた自分を少し休ませて、きちんと先生と生徒として向き合うと、もう先生を苦しませることのない安心感があった。先生が先生でいれば、生徒の私は嫌われる心配がない。進歩のないその関係は、ぬるま湯につかっているような感覚がした。
「久保」
実際、約束をしてから、先生は以前のように準備室にちゃんといるようになった。そのことで、先生はやっぱり私を避けていたのだと実感する。
「久保!」
「えっ」
誰かに名前を呼ばれていたことに気が付いた。ちょうど下駄箱から上履きを出したところだったから、はっとして上履きを床に落とした。振り返ると、私を呼んでいたのは会長だった。
「あ、会長・・・おはよう」
「おはよう」
会長は私を見て少しだけ笑った。いつもにこにこと明るくて愛想のいい会長だけど、今日はなんだかどことなく元気がないように見えた。会長は人に嫌われにくいタイプというか、敵を作らない人当たりの良さがある。そういうところを雄也に少し分けてもらいたいとよく思った。
「なんか、久しぶりだな」
「え、そう?教室で毎日会ってるよ」
「そうだけど・・・教室の外で会うのが」
「そっか、そうだね」
私は落とした上履きをそろえて履いた。ずっと一緒に帰ろうと言われたあの日から、部活のない日は何度か一緒に帰ったけど、ここのところ準備室に行くとちゃんと先生がいるので、会長と帰る機会がほとんどなくなっていた。