あの子の好きな子



いつも一緒に帰ろうという会長との約束が、私の先生に会いたいという気持ちだけでなかったことになりそうな今の状況に、心が痛まないわけではなかった。でも、あくまで帰れる日だけ一緒に帰るという約束だったし、会長とは今のところ何も起きないし。いつも一緒に帰ろうという微妙で不思議な約束の強さが私はいまいち掴めていなかった。

「・・・あの、会長」
「ん?」
「私、やっぱり放課後ってなんだかんだ用事あるし・・・会長も友達と帰りなよ、ね」

おそるおそる言ってみた。会長がどんな意図で私と帰りたいのか知りたくて、そこに特別な意味がないことを祈っていた。そろりと会長の顔を横目で見ると、少し上の方を見上げて考え事をしているようだった。かと思ったら、床の方をじっと見つめたりする。会長が話し始めた。

「・・・久保ってさ」
「うん」
「もしかして、付き合ってる奴いる?」

その言葉を聞いて、私は一瞬焦った。会長は私が毎日準備室に通って篠田先生と話していることを知っているのではないだろうか、それで私達の仲を疑っているのではないだろうか、もしそういう噂が流れてしまったら先生にとてつもない迷惑がかかる。そこまで考えて、いやいやと首を振った。万が一準備室に通う私が目撃されていたとして、篠田先生じゃあそんな噂にはならない。私は先生と生徒の恋を描いた少女漫画を読み過ぎて、「みんなにバレて先生がやめさせられそうになる」というパターンが頭にこびりついているだけだ。

「あの、別のクラスの・・・背高い奴、いるじゃん、よく一緒にいる。付き合ってたりするのかなって」
「え?あ、ああ、雄也か・・・」

やっぱり。雄也と私の関係について、この手の質問を受けたことは何度かある。雄也があまりにも他の人を寄せ付けないから、私と一緒にいるところが目立ってしまうだけなんだけど。

「違うよ。雄也は幼馴染っていうか。付き合ってる人なんていないよ」
「あ、そうなんだ。いや、彼氏がいるから、一緒に帰るの迷惑なのかと思って」

会長は気まり悪そうにそう言った。


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