あの子の好きな子
プラスマイナス
【プラスマイナス】
「今日、ダメダメだったな」
「そうだね」
夕方の公園は風が強くて、私は髪の毛を押さえながら会長と話した。会長は私に缶のホットココアをくれて、ベンチに座ると、球技大会の話から始めた。活躍したクラスメイトの話をひとしきりすると、会長は黙ってしまった。風が吹く度に、落ち葉が何度も足元を通り過ぎた。
「久保」
「ん?」
「ごめんな」
しばらくの沈黙のあと会長から出た言葉はそれだった。私は、会長の横顔を見る。強い風で会長の髪の毛も乱れていて、別の人みたいに見えた。表情からも、いつもの人の良さそうな笑顔が消えていて、初めて会う人みたいだった。
「俺、久保のこと、追い詰めてるよな」
「・・・そんなことないよ」
「噂のことでも迷惑かけたし、いつまでも・・・はっきりしないから」
会長の言葉に、緊張の糸がまたぴんと張ったような気がして、ココアの缶を握りしめた。もうすっかり冷めていた。
「何度も、言おうと思ったんだ。でもやっぱり、久保は仲良いクラスメイトだし、気まずくなったら、とか、色々考えちゃって。女々しくって、笑えるけど」
会長は少し笑い混じりに話した。私は大げさに頷きながら会長の話を聞いていた。