あの子の好きな子


広瀬くんは本音が見えにくいけど、その答え方で本当のことなのかごまかして言ったことなのかどちらなのかは私にもわかった。


「そっか」

私はそれだけ返して、今までのことを思い返した。私は広瀬くんと仲良くなってからかなり前の段階で久保さんの名前を聞いた。唯一、中学から一緒の友達として。家が近いと聞いた。幼馴染だと聞いた。最初から最後まで、幼馴染だと聞いた。久保さんには、誰か別の好きな人がいるんだろうか。さっきの広瀬くんの顔を見ていたら、きっとそうだと思った。

「別に、どうにもしないから。だから何っていう話だよ」

広瀬くんはそれだけ言うと、席を立った。水を飲みに行ったか、トイレか、購買かはわからない。

どうにもしないから。
そればっかりは、仕方ないし、どうにもしないよ。

その言葉を聞いて、久保さんには別の誰かがいる。きっとそうに違いないと思った。広瀬くんは、私がもう広瀬くんの気持ちを知っていると思ったのかもしれない。だからすぐに教えてくれたのかもしれない。「好きな人に好きな人がいたらどうする?」って聞いたのも、広瀬くんのことだと思われているかもしれない。そんな風に考えていた。でも、違うんだよ広瀬くん。

好きな人に好きな人がいてどうしようって悩んでたのは私なんだよ。
広瀬くんの好きな人にも好きな人がいるのかもしれないけど、
私も そうだよ。

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