あの子の好きな子
でも、そんなこと言われても困る。信じるも信じないも、興味があるって言われただけじゃ、私はどうしていいかわからないよ。
ここまで考えて思い出した。私は同じことを広瀬くんに言っていたんだった。それに、広瀬くんには改めて聞かれたことがある。
“興味があるって、どういう意味?”
私は広瀬くんのことをもっと知りたいんだと言ったけど、広瀬くんも今の私のように、どうしていいのかわからずに困惑したかもしれない。
「あゆみ先輩。好きの反対の話、聞いたことある?」
「え、何?」
「好きの反対は、嫌いじゃないって、よく言うじゃん」
「ああ、うん、聞いたことある」
「好きの反対は?」
「・・・興味がない、でしょ?」
向かい側に座る辻くんが、私の手を掴んだ。さっきは手首を掴まれたけど、今度は手だった。ぎゅっと一瞬力を込めて握られた手は、痛くはなかった。辻くんがまっすぐ私の目を見ている。
「言い方、変えた方がわかりやすい?俺あゆみ先輩が好きだよ」
心臓がドクンといったけど、辻くんに好きだと言われたからじゃない。広瀬くんに、興味があるの一点張りで、まだ一度もその言葉を言えていない自分の弱さを指摘された気がしたから。広瀬くんは一度大きなチャンスをくれたのに。
興味があるって、どういう意味?
その頃私はいっぱいいっぱいで、とても気持ちを伝える心の余裕なんてなかったのは確かだけど。中途半端に伝えたって仕方ない。興味があるから知りたくて、色々知るから好きになるんだと思ってた。でも、好きだから興味がある、興味があるってことは好きなんだと、あの頃少しでも伝えられていたら。もしそうならどうなっていただろうと、考えた。
「ねえ、先輩。わかった?ちゃんと、本気にしてくれる?」
「え・・・」
「俺、興味があるって言った方がリアルだと思ってたからさ。好きってなんか、よくわかんないじゃん」
辻くんは掴んだままの私の手を、指を一本一本弄るように触った。私はその手を咄嗟に振りほどいて、自分のもう片方の手でぎゅっと握る。