夫婦ごっこ
夫 大浦 恒浩

妻 大浦 紅波


  恒くんって恒浩って名前なんだ…

今さら知ったフルネーム
ずっと恒くんとか おにいちゃんとか
曖昧に呼んでたし 興味も全くなかったから


「結婚式の少し前に 社宅に越すから
それまでにいろいろ頭に入れてほしい。」

「何を…?」

「まさか契約結婚したなんて言えないだろ?
どうやって知り合ったとか 何年つき合ったとか
それなりのストーリーをお互い叩きこむから。」

「そりゃそうね。」

「それから…紅波も変わってもらうぞ。」

「何を?」

「わかってるよね?俺は雇い主だからね。
夫にもなるし 今度は社宅に入るから
妻は縁の下の力持ちで 出世にも関わってくる。
俺は出世したいんだ。
今だって同期のやつらの何倍も頑張ってる。
絶対あいつらを上から見下ろしてやりたい。
俺の力だけではなかなか難しいから
そこを紅波にも頑張ってほしい。
きっと若さで注目されるから
いい意味でも悪い意味でも……。」

 

  なんかめっちゃ偉そうだ……。


でも運転してる横顔は
今までより百倍は素敵に見える。


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