夫婦ごっこ
部屋についてから昔を思い出す感じで
勉強のように予習されられた。

中学の時こんな風に
恒くんに勉強教わったけど…
あの時の恒くんとは全然違って緊張感…。

厳しい進学塾の講師に
個人授業を受けているようだった。

「紅波はもともとは頭のいい子だから
大丈夫だろう。
それにあの頃みたいに演技してればいい。
いい子にみられるための演技。
俺はあれが本当の紅波なんだって思いこんだよ。
それだけ演技派ってことだろ?
俺の妻としてもそこんとこ重要だから。」


「人は変わるものなんですね~~。」

私は大げさに言った。

「何が?」


「あの頃のご主人さまは 私に勉強を教えるよりも
鏡に映る自分の前髪と格闘していた気がしたけど
どっちが本当のご主人さまですか?」

恒くんは苦笑気味に

「いつまでもガキでいれたら幸せだろうな。
俺にはそれはできないから
目指す方向に向かって戦いたいだけ。
それには紅波が必要なんだ。
紅波だって誰かに必要とされたかったんだろ?
それが俺。
俺たち良好な関係でいられるだろ?」


  全くあのチャラ男がなつかしい…。

恒くんが手を出した。

「ん?」

「これからよろしく。」

私はその冷たい手を握り返して

「よろしくお願いします。」と言った。
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