夫婦ごっこ
それからエステ通いも始まった。
どんだけ美しい妻作りをするんだか…
でもお金を出してもらってキレイになるなら
それはとても幸せなことだった。


髪の毛も恒くんの言うまま
ショートにして軽くパーマをかけた。

「すごいお似合いですよ。」

お店の人たちがタウン誌の宣伝に
使わせてくれというから
快く使ってもらおうと思った。

日曜日には一緒に洋服を買いに行った。


私は恒くんの理想の女に近づいているのかな。


今まで着たこともない洋服や靴
すっぴんで手入れもしなかった素顔につける
基礎化粧品セットは五万円もして
私は心の中でそんな高いもんいらないのに
なんて思いながらも
恒くんの言うがまま。

「今日からちゃんと肌の手入れもすること。
紅波の毎日の仕事だからな。
絶対に怠るな。」


確かにどんどん違う私ができ上ってくる。
知らなかった私の顔
今まで大嫌いだった顔

鏡なんか素通りしてたけど
手をかければかけるほど
キレイになるのが実感できる……。


恒くんのスケジュール通り
私は従った。

自分を磨いてない時間は言葉使いや
一般常識の本を読んだ。


久々の勉強みたいで楽しい気分になった。
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