夫婦ごっこ

包帯がまかれた紅波に

「もうすぐ会えるからな。目を覚ませ。」

俺はそう話しかけた。

「ちゃんとおまえの背中を押してやるから……
生きろ…。今までごめんな。
頑張ってくれたことにも気づかないで……
パートのことも…一人でさびしかったんだよな。
友達もいない…家にいる生活も
紅波のこと何ひとつわかってやれなくて
俺はやっぱりサイテーな男だな。素直になれなくて…
偽善者気取りで……ほんとにごめん……。」

紅波の手を握り締めて俺は泣いた。

後悔しても今の紅波には　届かないけど


「俺もさ……おまえのこと……大切な存在になってた。
あれだけかっこいいこと言った手前
そんなこと言えないだろ。
でも…言えばよかったな。
そしたらこんなことにはならなかった。
元気な体で　おまえの愛してる男に
大切にしてくれってそう言えたのに……。」

涙が落ちる。


人間には涙が枯れるということは
ないんだろうか……。


生まれて初めてこんなに泣いた。


孤独と恐怖と後悔で押しつぶされそうだった。


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「そしたら　こんな目にあわさなかった。」

紅波が愛おしくて気が狂いそうだった。