夫婦ごっこ
つわりはひどかった。
最初は受け付けていたプリンもダメ

みかんゼリーだけが私の胃を満たしてくれた。

夕飯の支度がめっちゃつらくて…
空吐きしながら 必死に作る。

「ごはん 食べないのか?」

「夜抜くことにしたの。

「ダイエットなんて 紅波には関係ないよ。」

「でも…大丈夫朝と昼はめっちゃ食べてるから。」

恒くんは心配そうに私を見てる。
だから努めて明るく元気に振る舞った。


  ママに…電話しようかな……

一応わだかまりは 消えたようだったけど
私の心の中にはそう簡単には全てを受け入れることはできなかった。

うわべだけはなんとか取り繕えるけど
やっぱり…一度亀裂が入ったものはそう簡単には
元には戻らないんだ。


「何で…こんなに具合悪くするの……。
お願いだから…ママをいじめないで……。」

恒くんの前で必死に元気を演じていた私にも
限界は近づいていた。


夕飯の支度
いつものように激しい吐き気でトイレに顔を
つっこんでいると
突然 恒くんが 帰って来た。

「紅?どうした?」

吐くものもなく胃液に血が混じるようになっていた。

恒くんはカバンを床に落として
ばれてしまったという脱力感でグッタリした私を
後から抱きしめる。


「紅波?どうしたんだ?」

恒くんに体重をあずけるように崩れ落ちた。


 
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