夫婦ごっこ
そんな時だった なんかお腹の中ではじけた音がして
なま暖かい液体が足元を流れて行った。

「あ……あ……。」

その液体に恒くんの足も濡れて
それが よく勉強していた 破水だとすぐにわかった。


「とうとう…産まれるんだね。」

私は緊張で声が震える。

恒くんはすぐに病院に連絡をして 私に陣痛の間隔を
計るように指示をする。

「いたっ・・・・」お腹の張りがキューって音をたてた。


恒くんは手際よく お産入院バックを玄関に置いて
私を着替えさせる。

「ごめんね……。」私の方が混乱していた。

「勉強してたからな。俺にまかせて 紅波はこれからの
戦いのために力をためてろ。」

そう言ってキスをしてくれた。

「一緒にいるからな。」

「うん。」


陣痛の合間を見て 車に乗り込んだ。

「いよいよかい?」管理人さんが奥さんと見送ってくれた。

「紅波ちゃん 入れたものは出す それだけのことよ。」

おもしろい発想に痛みながら私は爆笑した。


「そう出すだけのことよ。
うちらの愛の結晶を………。」

私はもうすぐ母になるんだ。
< 343 / 346 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop