夫婦ごっこ
トントン

しばらくしてドアがノックされた。


「はい。」

恒くんが顔を出した。

「ご飯食べないのかい?」

「うん。あの人たちの顔みて
食べたくないの。」

「そんなこと言ってたら一人ぼっちだぞ。
それでいいのか?」

「いいの。
もうすぐここも出ていくし。」

「行くあてあんのか?」

「うん。仲間の家転がってれば
ここにいるよりずっと楽だもん。」

恒くんは
そんな私を覗き込んだ。


「すっかり変わっちゃったな。」

「これがほんとの私なんだよ。」

「そっかな~俺にはそうは
思えないけどさ……。」

「恒くんなんて何もわかんないじゃん。」

私はちょっとムカついた。

「そりゃそうだけど……。」

「話なかったらもう下行ってくれる?
私もう寝たいんだけど…。」

恒くんは少し沈黙して

「あのさ……。」と沈黙を破った。
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