君を救いたい僕ら―愛され一匹狼の物語―
海浜公園の一角に花束が置かれている。一人の少年が海にむけて手を合わせていた。
「森村くん」
声をかけたのは良人だ。隣には夏樹の姿もある。
「渡会、悪かった」
慎吾は目を赤くしていた。ずっと一人で泣いていたのだろう。
「別に謝らなくていい」
「でも、俺はお前のことを人殺しだなんて」
「森村はみんなに担がれてただけだよ」
夏樹はそう言って持ってきた花束を手向けた。
「瀬名は変わりたがってた。お前のために」
「俺のため?」

結子が殺される数時間前、夏樹は結子の家を訪ねていた。
「夏くんに相談したいことがあるの」
結子は真剣に話し始めた。
「私、この間、森村くんに告白されたの。でもね、私なんかと付き合ったらダメだと思って断ったの」
「へぇ」
そのことは慎吾本人からも聞いていたから、驚くべきことではない。
「でもね、やっぱり私、森村くんと付き合おうと思ってる」
「え?」
「ふつーの女の子みたいになって、森村くんと付き合うの。もう悪いことしない」
ニコニコと笑う結子を見て、少し夏樹の心が和む。
「へぇ、気持ちが変わったんだね」
「うん。森村くん優しいから、好きになっちゃった」
「じゃあ、彼氏とはわかれるの?」
「うん。これから会って話すんだ」
その後、結子が死ぬことなど、全く考えもしなかった。
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