君を救いたい僕ら―愛され一匹狼の物語―
「間違いないんだな」
そこは警察署の取調室。取り調べをするのも、されているのも刑事だ。
「大川俊介くん、君は優秀な刑事になれると思っていたよ。残念だ」
渡会夏樹を強引に取り調べた俊介に瀬名結子殺人事件の容疑者であるとの疑惑が浮上し、捜査が進められていたのだった。
「金子くんも自供したそうだ。二人の優秀な刑事を一度に失うことになるとはね」
その言葉を聞いて俊介はうなだれた。
「金子に殺人を依頼しました。悪いのは俺です」

「お前の言うとおりだったな」
そこは警察署の所長室。豪華な椅子に座っているのは川越将志だ。
「直接の原因は?」
「大川と金子は麻薬取引や詐欺をはたらくグループから金を受け取る代わりに捜査情報を流していたんだ」
「そんなことを…」
「その情報は瀬名結子を通じて流していたらしい。自分たちが直接やり取りすると、バレる可能性が高いからな」
「じゃあ、瀬名さんはそれを辞めると言い出したわけですか?」
「ああ」
署長の声はどこか寂しげだ。
「これで三人の若者の将来が失われたよ」
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