366日の奇跡

「えっと…け…警察…って」

冷静になれなくて番号がわからない。落ち着いて落ち着いてと自分に何度も言い聞かせた。
その時―…

風呂場には不釣り合いな物が視線に入って思わず足で軽く蹴ってみる。それは大きなバッグ。

「何でこんな所にバッグ…」

しかも、何か紙が添えられている。真っ暗な風呂場の電気をつけると書き殴ったような字が書いてあった。

『とにかく中に入ってるメモの場所まで行け!落ち着いたら連絡する!』

これは親父の字だ…―メモ?
バッグを開けると確かにメモが入っている。誰かの家の住所と名前。お金もそのまま内ポケットに突っ込まれてる。

「ちょ…っとマジで洒落にならないじゃんっ!」

もう訳わからないままバッグを持って家を飛び出した。逃げろみたいに言われてしまうと家にいるのが怖くなった。

―…なによ!なんなのよ!あたしどうなっちゃうのよ!ふざけんなよ!ふざけんなよ!くそ親父!

叫びたいけど近所迷惑を考えて心の中で思いっきり親父の悪口を言いながら逃げた。

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