美加、時空を越えて

第5の扉~人々の思い~

美加が第5番目の扉を見つけた時、2700年は、大変な騒ぎになっていた。

時空の扉が、何らかの異変を受けたのだ。
美加に起こった出来事や感情が 人々を襲った。
人々の一部は竜巻に呑み込まれる恐怖を感じた。

又、ある者は、兵士達の怒りや虚しさ、悲しみを感じていた。
ある者は、言いようのない重圧感を感じた。

とてつもない幸福感を感じ笑い出す者もいた。

……。彼らは、考えた。

不安や絶望感、恐怖といった感情は必要で大事なものだ。
問題はその後の行動をどう取るかという事だ。

しかし、この状況はあまりに酷だ。
次の扉は何が待っている?
時空の扉を誰が作ったのか、それとも自然とそこに出来たのか?

……誰もわかるものはいなかった。

「扉を壊してしまおう」
小さな声が、聞こえた。

美加の目的が守に逢うという事だから、扉は必要ではない。
もしも必要なものならば又、誰かによって作られるだろう。

とにかくこれ以上、美加を苦しめたくはない。
美加は、我々自身だ。

その結論に達したとき、扉は彼らの思いによって壊された。

2500年頃、1つの問題が起きた事を人々は考えた。
人々は、苦しんだり不安になったり恐れたりする事はなくなった。
しかし、深く愛する事が出来なくなった。
悲しみを経験できずに、人の痛みを経験できずに、思いやりを持つことは、難しい。
悲しみが何かを頭では理解しても体験しなければ魂にはそれがどういうものか、分からない。
自分に深い悲しみがあるから、他人の深い悲しみを理解する事が出来る。
心身ともに満たされた時、愛すること、思いやりはより深くはなったが、人間は、より以上のものを求める。
より深く愛し、より深く思いやること、或いは感謝の気持ち。
それには、深い不安が必要だった。
そこで考えた。
誰かが深い悲しみに落ちたとき、それを体験する事は出来ないかと。
心をオープンにする方法は、科学的に見つかり、悲嘆にくれている人がスイッチを入れればそれを受け取る準備がある人に流す事が可能となった。
これによりより大きな栄光に包まれている、例えばオリンピックの出場者など、より深い体験は、その会場ごとオープンにする事が出来るようになった。
会場にきている全ての人々が栄光につつまれる体験をする。
時空の扉は、何かしらの力で、不具合が生じ、美加の心のオープンスイッチが入り、受け取る準備がないにも関わらず体験が2700年の人々に入ったのだろう。

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