パラドックスガール
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気づくと、目の前は羽田野家だった。
雨で濡れた眼鏡を外してしまい、二階の窓を見つめる。
雨音に混じって聴こえる、ギターの音。
メロディでもない、ただキーを弾くだけの音の調べ。


「…茗子、気づくかな。」


そう呟き、玄関の門にあまり音をたてないように持たれた。
雨の日は、彼女はきまって部屋でギターをいじってる。
電気もつけず、薄暗い部屋で。
下からもう一度彼女の部屋の窓を見つめた。

僕はここだよ。気づいて。

心の中で彼女を呼んでみた。
届くはずないのに、と、自分のしてることがあまりにおかしくて笑った。

届いたら奇跡だよ。




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